Morning Pitch
2025.02.14
イノベーショントレンド

【アグリ特集】食糧安保などを背景にアグリテックへの投資が活発化。日本ではスマート技術の活用による担い手の育成が課題となる

\イノベーショントレンド解説/

この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

アグリ特集

今回は、11月5日に開催したアグリ特集です。

人口減少や食糧安全保障でアグリテックへの期待が高まる

アグリテックは、先端技術やデジタル技術を農業の生産・流通・販売に活用することで、課題解決や生産性向上を図る取り組みを指します。対象分野は、植物工場や水耕栽培などの施設園芸、ドローンや衛星画像を使った生産管理、AIを活用した作付けの最適化、ロボットによる自動収穫、ブロックチェーンを使った流通の透明化、直売所やECによる販路拡大など多岐にわたります。

近年では人口減少や食糧安全保障への意識の高まりを背景に、アグリテックへの投資や取り組みが世界的に活発化しています。日本でも後継者不足や高齢化、労働力不足、気候変動などの課題を背景に、スマート農業やデータドリブン農業への移行が加速しています。一方で、海外に比べ農業の生産性が低く、小規模経営が多いこと、新規参入者の育成やデータ基盤の整備が遅れていることなどが課題として残っています。

アグリテック市場の動向

農業従事者の担い手不足が喫緊の課題

農業界が直面する最大の課題の一つが、担い手の不足です。2023年の農林業センサスによると、農業就業人口は約169万人と、1985年の約548万人から大幅に減少。高齢化も進み、2023年では65歳以上の割合が約70%に達しています。後継者がおらず廃業に追い込まれる農家も少なくありません。

こうした中で、省人化・効率化を実現するスマート技術やロボット技術の導入が急務となっています。例えば、トラクターやコンバインの自動運転、除草や収穫ロボット、ドローンを使った農薬散布、衛星画像を用いた生育監視などが普及しつつあります。また、生産現場のデータを蓄積・分析し、最適な栽培管理を行うサービスも登場しています。

農業従事者の減少

国内食品ロスは年間520万トン超

食料自給率の低さも日本の農業が抱える構造的な問題です。カロリーベースの食料自給率は38%台と先進国の中でも低く、特に小麦・大豆・トウモロコシなどの飼料用穀物は海外に依存しています。気候変動や地政学的リスクが高まる中、食糧安全保障を確保するためには国内生産力の強化と、同時にロスの削減が重要になります。

実は国内の食品ロスは年間520万トン超と言われており、生産・収穫段階での廃棄、流通・小売段階での廃棄、そして家庭での廃棄が発生しています。収穫時期の天候不順による規格外品の発生、売場での鮮度管理の難しさ、消費者の買いすぎや賞味期限を意識した廃棄などが要因です。食品ロスを削減することは食糧安全保障の強化に直結するほか、環境負荷の低減やコスト削減にも寄与します。

食品ロスの現状

アグリテックで解決できること

アグリテックはこうした課題に対して多角的にアプローチできます。生産性向上では、AIによる生育診断や病害虫予測、自動化技術による省力化、環境制御型の施設園芸などが挙げられます。流通面では、需要予測に基づく計画的な出荷、鮮度管理、フードバンクとの連携などが効果的です。さらに販売面では、産地直送のEC、サブスクリプション型の野菜セット、食品ロスを削減する規格外品の販売など、消費者と生産者をつなぐ新しい仕組みが生まれています。

今回はアグリテックの中でも特に注目される「スマート農業」「生産管理」「フードロス削減」「サプライチェーン」「次世代食品」という領域から5社を紹介します。

紹介企業の領域
登壇企業

農業従事者の知見をAIで解析し栽培の最適化を支援(株式会社farmo

farmo(ファーモ)は、農業従事者が現場で感じた“勘”や“経験”をAIで解析し、栽培の最適化を支援するサービスを提供しています。圃場ごとの土壌・気象データをもとに、水管理・肥料管理・病害虫発生リスクを予測。スマートフォンから誰でも簡単にアクセスでき、小規模農家から大規模農家まで幅広く利用されています。同社は生産者の現場の知見を蓄積し、再現性のある“データのある農業”の実現を目指しています。

世界初のAI畜産ロボットで酪農の生産性向上を目指す(株式会社Grazper Technologies

Grazper Technologies(グラスパーテクノロジーズ)は、牛舎内の牛の行動をAIで解析し、世界初のAI畜産ロボットを開発しています。個体識別や発情検知、健康状態のモニタリングを自動化することで、酪農家の労働力不足と生産性向上に取り組みます。特に24時間体制で牛を観察できる点が強みで、繁殖効率や牛群管理の精度向上に貢献します。

フードロスを削減する規格外野菜の定期便(株式会社SUSTAINA

SUSTAINA(サスティナ)は、規格外野菜を活用した定期便サービス「KURADSHI(クラドシ)」を展開しています。見た目や大きさの理由で出荷されない野菜を生産者から直接仕入れ、消費者へお届けすることで、生産者の収益改善とフードロス削減を同時に実現。サステナビリティと社会課題解決を両立したビジネスモデルが特徴です。

畜産の遺伝子組み換え不使用で培養肉を生産(株式会社IntegriCulture

IntegriCulture(インテグリカルチャー)は、培養肉を中心とした次世代食品の研究開発を行っています。独自の「カルチャーメディア技術」により、血清(胎児牛血清)不使用で細胞培養を実現し、培養肉の低コスト大量生産に向けた技術基盤を構築。食糧問題や環境負荷への対応を目指し、食品産業の未来を変革しようとしています。

農業用ドローンで高精度なデータ収集と作業の効率化を実現(株式会社AgriPick

AgriPick(アグリピック)は、農業用ドローンを活用したデータ収集・解析サービスを提供しています。圃場の生育状況や病害虫の発生状況をマルチスペクトルカメラで可視化し、農薬散布や肥料散布の最適化を支援。これまで経験に頼っていた農作業をデータドリブンに変え、生産性と品質の向上に貢献します。

食糧安全保障や気候変動への対応が叫ばれる中、アグリテックは日本の農業にとって喫緊の課題解決に不可欠な領域です。生産現場の省力化から食品ロス削減、次世代食品の開発まで、さまざまなアプローチがこれからの農業を形作っていくことでしょう。

 

▼テーマリーダーProfile

青砥 寛晃

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

Industry&Function事業部

青砥 寛晃(Hiroaki Aoto)

 

■略歴
・大学院では土壌微生物を利用した植物の病害抑制に関する研究を行う
・新卒で某総合商社に入社し、肥料・農薬等の販売や輸出入業務に従事
・現職ではスタートアップ支援、新規事業創出支援、官公庁・自治体と連携したアグリテック領域のエコシステム構築に従事

 

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毎週水曜日7時から開催している、ベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出すことを目的とした ピッチイベントです。毎週5社のベンチャー企業が、大企業・ベンチャーキャピタル・メディア等の オーディエンス約300名に対しピッチを行います。2013年1月から開始し、約570回、累計2,800社超の ベンチャー企業が登壇しています。デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社、野村譲券株式会社 の2社が幹事となり開催しています。

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