【人的資本の最大化特集】すべての企業が目指す共通のゴール。労働者一人ひとりモチベーション・生産性を向上させ、国際競争力の強化につなげる
\イノベーショントレンド解説/
この連載ではモーニングピッチ各回で取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信します。

今回は、11月28日に開催した人的資本の最大化特集です。
「人」の創造的・生産的能力を資本として捉える
人的資本は、個人の知識、技能、経験、健康などの創造的・生産的能力を資本として捉えた概念です。企業における人的資本経営は、労働者一人ひとりのモチベーションや生産性を向上させることで、企業の中長期的な価値向上や国際競争力の強化につなげることを目指します。近年では投資家をはじめとしたステークホルダーからも、人材や組織力への投資姿勢や情報開示への期待が高まっており、2023年には東証も人的資本に関する開示のあり方を改める改革を行いました。
人的資本を最大化するためには、採用・育成・配置・評価・報酬など多面的なアプローチが求められます。特にDX推進や働き方改革、ダイバーシティ&インクルージョンの進展により、人材データに基づいた意思決定や、従業員エクスペリエンス(EX)の設計が重要性を増しています。

労働生産性の向上が喫緊の課題
日本の労働生産性はOECD加盟国中で低位に留まっており、2022年の1人当たりGDPは約5万ドル(購買力平価ベース)と、米国やドイツなどと比較して大きく水準が低い状況です。少子高齢化による労働人口の減少が進む中、生産性向上は企業の成長にとって喫緊の課題です。人的資本の最大化は、単なる人材育成にとどまらず、働き方の変革やテクノロジーの活用、組織風土の醸成など、企業全体の変革を伴う経営課題と言えます。
加えて、エンゲージメントの低さも日本企業の課題として指摘されています。世界的な調査では日本の従業員エンゲージメントは低水準にあり、意欲や活力が低い状態が生産性の低迷に繋がっているとの指摘があります。従業員が働きがいを感じ、自己成長できる環境を整えることは、人的資本経営の核心と言えるでしょう。

人的資本経営を支える4つの領域
人的資本経営を推進する上で、特に重要なのが「人材データの可視化」「採用・育成の最適化」「健康・ウェルビーイングの向上」「エンゲージメント醸成」の4領域です。これらを相互に連動させることで、人材投資の効果を最大化できます。
人材データの可視化では、従業員のスキルやパフォーマンス、キャリア志向をデータとして蓄積し、最適な人材配置や育成計画を立案します。採用・育成の最適化では、AIを活用した採用マッチングや、個別最適化された学習プログラムの提供が鍵となります。健康・ウェルビーイングでは、従業員の心身の健康を支えるサービスが生産性向上に寄与します。エンゲージメント醸成では、目的意識や組織への帰属意識を高める取り組みが重要です。

従業員の体調・エンゲージメントを可視化する企業も
具体的な取り組みとして、従業員の体調やエンゲージメントを可視化するサービスが増えています。例えば、ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリで睡眠や運動、ストレス状態をモニタリングし、個別の健康アドバイスを提供する仕組みが導入されています。また、組織のエンゲージメントを定期的に計測し、対話を促進するプラットフォームも広がりを見せています。
採用・育成面では、AIを活用した採用候補者の適性評価や、ビデオ面接の分析が導入され始めました。学習面では、一人ひとりのスキルギャップに応じたコンテンツを自動提案するLMS(学習管理システム)や、OJTのDX化を図るサービスが登場。こうした取り組みは、経験に依存しがちな人材マネジメントをデータドリブンなアプローチへと変えていきます。
今回は、人的資本の最大化に挑むスタートアップの中から「人材データ」「採用・育成」「健康・ウェルビーイング」「エンゲージメント」といった領域で活躍する5社を紹介します。


人材データを可視化し、最適な人材配置と育成を実現(株式会社TalentX)
TalentX(タレントエックス)は、社内の人材スキルやプロジェクト実績をAIで解析し、最適な人材配置と育成プランを提示するプラットフォームを提供しています。従業員のキャリア志向やスキルギャップを可視化することで、個人の成長と組織の生産性向上を同時に実現。これまで経験や勘に依存しがちだった人材マネジメントをデータドリブンに変革します。
動画1本で採用候補者の適性を多角的に評価(株式会社HireRock)
HireRock(ハイヤーロック)は、採用候補者が1本の動画で自己をアピールし、AIと専門家が共同で適性を多角的に評価する採用プラットフォームを提供しています。履歴書や面接だけでは見えにくい人物の本質や潜在能力を引き出し、多様な人材との出会いを促進。採用の多様性向上とミスマッチ削減を両立させます。
睡眠データを活用した従業員の健康経営支援(株式会社Sleeptech)
Sleeptech(スリープテック)は、睡眠データを活用した企業向け健康経営支援サービスを展開しています。ウェアラブルデバイスやアプリで従業員の睡眠状態を可視化し、睡眠の質に応じた改善アドバイスを提供。質の高い睡眠が生産性や創造性に与える影響をデータで示し、企業の健康経営とパフォーマンス向上を支援します。
組織の心理的安全性を可視化し対話を促進(株式会社PsySafety)
PsySafety(サイセーフティ)は、心理的安全性やエンゲージメントを可視化し、組織内の対話を促進するプラットフォームを提供しています。短時間のアンケートでチームの状態を定期的に計測し、対話のきっかけとなる分析レポートを自動生成。特に多様な人材が活躍する組織において、心理的安全性の醸成は生産性向上に直結します。
離職リスクをAIで予測し早期介入を支援(株式会社KeepRetain)
KeepRetain(キープリテイン)は、従業員の行動データやアンケート回答をAIで分析し、離職リスクを早期に予測するサービスを提供しています。リスクが高い従業員を可視化し、マネージャーとの対話やキャリア支援などの介入を促すことで、離職率の低下と組織の安定化に貢献します。採用コストの削減と、貴重な人材の流失防止を実現します。
日本企業の国際競争力強化や、生産性向上のためには人的資本の最大化は避けて通れないテーマです。採用から育成、健康・エンゲージメントまで、人材に関わるあらゆる領域でイノベーションが起こりつつあります。
▼テーマリーダーProfile

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
Industry&Function事業部
佐藤 健太(Kenta Sato)
■略歴
・新卒でDTVSに入社後、スタートアップ支援に従事
・人材・HR領域を中心に、採用・育成・組織開発に関する新規事業創出支援を担当
・スタートアップと大企業の共創プロジェクトや、政府・自治体のワークスタイル変革支援にも携わる
~イノベーショントレンドを定期的にキャッチアップされたい方へ~
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